2014年6月29日日曜日

昔の雁坂小屋その1

 いま宿泊棟に使っている建物は『埼玉国体』の時に建てられました。昭和42年(1967年)の5月から秋にかけて作業が行われ、秋の山岳競技の宿舎として使われました。もう47年も前の事です。その頃の様子を写したアルバムの中に昔の小屋の写真が見つかりましたので特別公開です。
 右側の写真の白いテントの脇にあるのが旧の雁坂小屋。手前に見える管理棟は現在もまだ現役です。テント場方向に青い屋根のトイレも見えます。現在のトイレの手前にありました。右わきの現在の写真と比べながらご覧ください。左の写真はいま水場になっている辺りから写したもの。小屋の前にマキ小屋がありました。ともに昭和42年に撮影されました。近日中に宿泊棟の土間に拡大写真を張っておきますのでどうぞご覧ください。
 古い事がもう一つ。“東京オリンピック”・・・・と言うと2020年と思うでしょうが、1964年10月10日から開催された東京オリンピック。1964年は昭和39年。この年の山小屋の料金表も見つかりました。素泊まりで300円。テント泊は30円でした。そしてこの頃は山小屋管理人組合で料金を決め、秩父のどこの山小屋でも統一料金でした。現在は各山小屋が独自に料金を設定しています。
このころの物価は、新幹線 東京→大阪間 ひかり2480円、こだま2280
国立大学の授業料(年間)12000
お店で飲むビール 115
コーヒー 7080
お子様ランチ100円~150
かけそば 50
たばこ ホープ 80
ワンカップ大関 85
カッパエビセン 50
ロッテガーナチョコ30
*この料金表は実物を張ってありますのでご覧ください。 
*これからも現在の宿泊棟工事の様子を何回かに分けて載せていきます。
 
*オーナーゴローさんからの連絡で、便所国道その2でお知らせしたトイレの「絵」、いまは張ってあります。

2014年6月24日火曜日

便所国道その2

 まだ食事の住んでいない方は、どうぞ先に食事を済ませてからお読みください。
先週の土曜日(6月21日付)に京都の新聞に載った記事です。
 
 外国人観光客が増える中、京都市内の公衆トイレの和式便器がトラブルの種に。使い方が分からず、便器の前後を間違えたとみられる見慣れぬ汚れに、周辺の住民や清掃業者が困惑。市は案内板で注意を呼び掛けている。 と言うものです。 http://www.kyoto-np.co.jp/sightseeing/article/20140621000061

 これ、実は雁坂にもある事なのです。
 雁坂のトイレは “昔ながら” のトイレです。それで、少しでも快適にお使いいただけるように、トイレ掃除は特に気を使っています。お客様が出発し寝具などを干した後にトイレ掃除に取り掛かります。白い便器がよごれているところを、重点的にこすります
「あ、今日はきれいに使ってもらった。よかった。」とか「腹具合が悪かったのかな?テントで冷えたのかな」など、ブツを見ながらいろいろ考え、ごしごし、四つの個室を掃除します。
 正直、楽しい仕事ではありませんが、山小屋にとって水と同じでトイレも欠くことのできない設備。日頃からきれいにしておくことで、お客様にもきれいに使っていただけます。 

 ところが、どうしたらこういう汚れ方になるのかと悩むような事がたまに有ります。それで今は小さな紙に「こちらが前です」と書いて張っています。 

 京都の場合は英語、ハングル、中国語で、「備え付けの紙を流す」「便器に接触しない」などの注意と、中腰の姿勢で用を足す絵が張って有るのだそうですが。
 先日、セイちゃんが小学校からトイレの使い方の掲示物をコピーしてもらい小屋にあげました。でも、絵まではどうもなあ・・・・とまだ張ってはありません。雁坂のトイレに入って、「こちらが前です」の紙を見て、なんだこれは?と思われた方もおいでになるでしょうが、このような事情があるのです。
 
 雁坂小屋のトイレは、汚物の処理にEM菌を使っています。EM菌を使うことで汚物の量を少なくし、また臭いも軽減しています。そのために殺虫剤が使えません。これからの時期は小ばえが発生しやすくなります。ご迷惑をおかけし申し訳ございませんが、ご理解をお願いします。
*皆様にお願いしている『トイレの協力金』でEM菌を購入しています。
*トイレに入る際はブツ以外の落とし物にご注意を。しっかりポケットのチャックを締める。余分な物は持ち込まない。などなど。

2014年6月22日日曜日

便所国道

 初めにお断りしておきます。
『便所国道』という言葉を雁坂小屋の関係者が正式に使った事はありません。何時の頃からかお客様の中で使われ、またインターネットの世界で一人歩きするようになってきた言葉かと思います。

 ちりん、ちり、ちりん・・・熊よけの鈴の音が近づいてきます。
お客さん今日はどちらから? と お声掛けすると
「三富からです。トイレの写真を撮らせて下さい。」
 年に数人このようなお客様がおいでになります。先週もおいでになりました。そして「これかあ」とかつぶやきながらトイレの間を行ったり来たり。何枚か写真を撮ると来た道を帰っていきます。雁坂小屋滞在時間15~20分。
テント泊りのお客様の中にも「噂のトイレ」を見るのも目的の一つと言う方もおいでになります。

 長い間荒れて通行不能状態だった黒岩コースが整備され、再び人が通れるようになってまだ20年も経っていません。小屋のトイレは今でこそ黒岩コースの上に設置されている形になりますが、トイレはそれよりも前から今の場所にありました。
 以前は秩父から雁坂へ登るのは突出峠コースでした。川又からしばらく歩くと大正11年の石の道標があり、水の元には更に時代をさかのぼる石仏が安置されています。秩父往還と言われた昔から人々が歩いてきたこの道。昨年の10月26日の記事でご紹介した伊勢湾台風前の峠付近の地図にも突出コースに道がしるされています。

 と言うわけで、1953年に二級国道140号線と指定されてから1998年に雁坂トンネルが開通するまでの「開かずの国道」は川又から突出峠を通る登山道だと思っていました。

 ところが、今回改めて手元にあった昭和44年のヤマケイ、アルパインガイドの「奥秩父大菩薩連嶺」を開いて見てビックリ!!!(地図左上)
川又まで車道が来ています。そこから先は点線の登山道になっています。水の元の水マークや岩道場(最近は雁道場)へ続く道が右に。左の点線は黒岩尾根から雁坂小屋に続いています。何とここに四角に囲まれた140の文字を発見。
今のはやり言葉でいうと「てぇー!」。昔なら「じぇじぇじぇ」・・・・NHKの朝ドラの見過ぎ。
人が通る事がなくてもこちらが「開かずの国道」だったのか。と言う事はやはり『便所国道』なのか・・・・・
トイレの話題はまだ続きます。京都の新聞で見つけた記事から・・・・・・。

*雁坂の気温17℃くらいでした。

2014年6月16日月曜日

「梅雨の中やすみ」と  「水を呼ぶ作業」の話

 この土日は晴天に恵まれました。ワールドカップの騒動にも負けず、おいで頂いたお客様、有難うございました。 また『春を背負って』の映画も公開されました。蒼井優さん演じる高澤愛が屋根の上に布団を広げるシーン同様の光景が雁坂でも見られました。いいお天気の中、寝具類67枚を小屋の外に干し、取り込んで。ていねいに1枚1枚たたみ重ねてベットにセット。これだけの数になるとなかなか大変です。次においでになるお客様のために。雁坂の毛布はフォワ、フォワですよ。
  **今年も沢登りのシーズンになりました。大雪の影響で根おこしの倒木が多いようです。気を付けてお楽しみください。
雪の中の豆焼き沢水源
小屋開け最初の仕事は水。『水を呼んでくる』作業の様子です。昔から使ってきた小屋近くの水源。黄色のシートをかけてある水源まで上がり半ドラムに水を受けます。ドラムに勢いよく水が流れてくればパイプをつなぎ、小屋まで引いてきます。途中の空気を抜くためにパイプをつないでは水を流し、勢いよく流れるとまた次をつなぎます。パイプの中が水で十分に満たされて流れ始めれば多少のアップダウンが有っても水は上がってきます。雪の中での作業は濡れながらでつらいものです。


 一方、豆焼き沢の水源はまだ雪の中。固く締まった雪の中から受水タンクを掘り出します。その上にある取水タンクのパイプを掘り出し、水をひきます。受水タンクから水があふれ出せば、秋の小屋締めの時に開いておいたバルブの作業。一つ一つのバルブからも水が勢いよく流れ出るのを待ちます。冬の間眠っていた空気が押し出され、抜けきれずに凍結した部分も後ろから押さてきます。勢いよく噴き出すまで待ちます。勢いがよい分小屋まで水が上がってきます。
 そうでないと下の流しまでは勢いよくきていても小屋の庭にはチョロチョロ、箸一本分の水。5月25日にやっと豆焼き沢からの水が庭にきました。
 
 

  梅雨の季節を迎え、沢の水量が増えると今度は押し流されてきた落ち葉が取水タンクに詰まります。
 
  何気なく小屋の庭に流れている水ですが、このような作業をしながら水を引いてきています。
 それで、お泊り以外のお客様には50円以上のご協力をお願いしているしだいです。

 *全部の写真が大きくなってはくれません。どうしてだか不明ですが????

2014年6月8日日曜日

雁坂花だより6.8


管理小屋をバックに
雨でけむっている宿泊棟
とうとう関東地方も梅雨入り。「宿泊のご予約を頂いているけど、どうなるかな?」と思いつつ、金曜日に雨の中を小屋に上がりました。登る途中の黒岩コースは、盛りを過ぎたシャクナゲの白いはながらが登山道にたくさん落ちていました。でも小屋の周りのシャクナゲはまだ見頃で、しずくも付けて色鮮やか。精一杯咲いています。気温は朝も昼間も夜もずっと8~10℃でした。 『埼玉県に大雨警報』とラジオが知らせるものの、小屋の辺りは霧雨程度の降り方。平野部の方が強く降っていたようです。金曜の夜には下から、「小屋泊りはキャンセル」との連絡。「ひと月分の雨がまとめて降っているようだから、まあしょうがないか」と納得。・・・・納得のいかない事もありました。それはまた今度。
 雨が降れば足元を見ながら歩く。足元には雨を待っていたかのようにギンリョウソウがにょきにょき。
また、突出コースの水源に行く途中の沢にはまだ雪が。これって“雪渓”の見習いと言ってもいいのかな。先々週や先週の20℃を超す暑さのなかでもまだ残っていました。
新緑の中に残る雪
①雨が降れば、岩も樹の根も、落ちている枝もみな濡れています。乾いている時なら難なく歩けるこれらの場所が、ゴムの靴底はよく滑ります。特に下りの場面。体も疲れてきて集中力も弱くなる。登りよりも目の位置が高くなり、地面の様子を捉えにくい。雨具のフードをかぶっていると見えにくい。メガネをかけていると水滴が付き更に見えにくい。下りでスピードが出ている。そんなときに足元から前方に視線を動かしたとたん、「あ!!」・・・・よく滑る。経験者はすぐに語る。気を付けて、雨の山歩きをお楽しみください。雨の山はあなたを哲学者にします。
 ②遅くなりましたが、突出コースの邪魔物、数か所を処理して降りてきました。1か所だけはすみません、下をくぐってください。雪の影響で、数本の木や枝が一緒に絡まり合って押し倒されているところが目立ちました。

2014年6月2日月曜日

雁坂花だより6,1

 下界が日中35℃になろうとする頃、雁坂も21度に。(明け方4時でも11℃ありました)
 そのため開花が進みました。つぼみの時には気付かなかったシャクナゲがあそこにもここにも状態。小屋の脇にあるシャクナゲも開きました。黒岩コースのシャクナゲは小屋から20分くらい歩くと楽しめます。最後のシャクナゲを楽しむなら今度の土日。まだつぼみもたくさんありましたので。
 シャクナゲに変わってイワカガミやフデリンドウも姿を見せてくれました。(黒岩コース上で撮影)
 マイヅルソウもつぼみを持ち始め、ギンリュウソウも3本見かけました。一方登山口付近では「春ゼミ??」の大合唱が楽しめますよ。
 この土日、私より年上の70代のお客様がお元気。奥秩父の自然を楽しんでいただく事が出来ました。またお越しください。
 水の作業が一区切りついたので、暑かったのですが合間を見て、テント場も少し手を入れ始めました。少しでも平らになるようにと、今後も作業が続きます。
*小屋を降りるときにセイちゃんに案内されたのが、シャクナゲの株の中を通る秘密の道。踏み跡がかすかに残る森を進み、背負子を枝に引っかけ、倒木をまたぎながら進むと、3mほどもある大きなシャクナゲの群落。辺り一面シャクナゲ。「うわ―!!!!」と声を上げたけど、感激で写真を撮る事も忘れるくらいの見事さ。と言うよりカメラを出すのも大変な倒木や枝、枝、枝。でもぜひ今度はお客様にも教えてあげたい。見せてあげたいシャクナゲでした。